静かな沼

時々、思考が勝手にうねうねと動き出して世界を見せてくる。
無性に不安になる。
胸がドキドキする。
私はいつまでたっても不安だろう。
船乗りの夫の帰りを待つ妻のように。
私の目の前に居なければ、それは居ないこと同じだ。
とはいえ、声を聞けば済むというわけではない。
連絡を頻繁にとれば満足できるというわけでもない。
しょっちゅう会いたいというわけでもけしてない。
ただ居ない時間を、思い出したり、忘れたり、やっぱり思い出したり、
しながら日々を過ごす。
そんな風な時間の過ごし方を、
私はいつの間にか当たり前のこととして受け入れてる。


正直いって意味が分からない。
ただ自然と私の心がそんな風な態度をしたがるのだ。
意味が分からないし、ぞっとする。
気持ちが悪いし、苦しい。
そんなのおかしい。
でもそれが当然だと思ってる。
私は恨めしい。
もっと普通に人を好きになって、
もっと普通に会って、ご飯を食べて、休日はふたりでゴロゴロする。
そんな普通がほしいはずなのに、
そんな生活からそっぽを向いて、
全くの真逆の暮らしをやろうとしているし、
実際すでにしている。


私は執念深いのだろうか。
無視をし続け、気にし続ける生活をあとどれぐらい過ごせばいいんだろう。
勝手に忘れたらいいし、勝手に恋人を作ればいい。
それはわかっているのに、それがどうしても出来ない。
それが苦しい。


何年かの月日がたって、
状況が変わっていることを祈る。
死ぬまでこんな状況が続くなんてそんなことはあっちゃいけない。
いや、あったらあったで、それはおもしろいかもしれない。