なまりいろの空の下で

私は学校なんて行かなければよかった、
と思っている。
そして大学なんて行かなければよかったし、
東京なんて行かなければよかった。
この街から出なければよかった。
だからと言ってこの街を愛しているわけではない。
むしろなぜこんな街に産まれてしまったんだろう、
という気持ちの方が強い。
それでも同じようにこの街に
居心地の悪さのようなものを感じている人達と、
友達になって、その感覚を共有出来るというのは、
ある種の一体感が産まれて心地のよいものである。


人生で「私が選んできた」と思っていた物事ことは、
実は私が選んでいないということに気付く。
いや、確かに私が選んだものでもある。
しかし頭の柔らかいうちから、
色々なことを叩き込まれ、
それが当たり前とされ、
私はそれを真っ白い気持ちで、
ひたすら受止めていただけに過ぎない、
という事に気付く。
最近そんなことばかり考えている。


だとしたら、私は何をすべきなのか。
したいのか。


ただ浮遊していたいのだ。
あらゆる面倒から解放されたい。
自分を知る為にあらゆる物事を
引き受けていた時期もあったけれど、
それが正しかったどうかは全く解らない。
もちろんその時は楽しかったのだろうけど、
今の私にはその価値を見出すことができない。


横隔膜の奥の奥の方に、
鉛がつまっているみたいに身体が重たい。
全く方向感覚が無くなった。
今どこにいるのかさえも掴めない。
腐りそうで腐らない果実みたいに、
熟した甘ったるい匂いが辺り一面に漂っている。
どうしようもない。
世界は灰色。
でもそれが普通なのかもしれない。
その世界を抱えながら、
新鮮な若葉みたいな朝露みたいな世界も、
きっとあるのだろう。
どこに居るかは、脳に分泌されるホルモンの影響だ。
私は今灰色。
次は何色だろう。