スカイクロラ

ずっと気になっていた
押井守監督の『スカイクロラ』を観る。
なんでだか、村上春樹が頭の中をちらつく。
永遠の青春の世界が、
私の中でちょっとダブるのかも。
世界のどこかで、必ず戦争は起きていて、
一部の人間が殺しあう事実があることで、
世界のバランスが保たれていて、
その他大勢の人間が、
安心して平和をむさぼっているのだとしたら、
この世はなんて奇妙な世界なんだろうと、
思う。
無論、これは映画の設定なのだけど、
本当にこの世でそのような真理が成り立っているのだとしたら、
私達がむさぼっているこの幸せとは
一体なんなんだろう。
とにかく、人間は変な生き物で、
この世は変な世界である事は、
間違いない。
そして、とんでもなく美しい物語が潜んでいる。
それを発掘していくのが、
作家の仕事なのだろう。
その後に、太宰治を語る田口ランディを観る。
田口さんは尋常じゃなく美しく、
そして力強い瞳の持ち主であった。
人間のどんなに醜悪な部分とぶつかっても、
純粋に見つめ続け、純粋な物語に分解しそうな目。
それは、結局のところ人間にとって救いとなる。
そんな風にして、田口さんは、
自力では救われないぐらい、人生どん底の人たちが、
なんとか人生踏ん張れるように、
さりげなくお手伝いをしているのだと思う。
社会にとって、どんなに無意味で不必要な人間にも、
どこか意味があってこの世に生まれ落ち、
私達になにかしらのメッセージを発し、
生きているに違いないという、
この世に生きる全ての人間に対するゆるぎない信仰。
とにかく、それを読み解くしかない。
それぞれの独力で。
無を有にし続ける事が、
全ての人間に与えられたこの世の課題である。

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