まわる世界

解ったと思った事を
すぐに忘れてしまって、
一体私は何を解った気になっていたんだろう、
という変な気分に陥る事が多々ある。
そもそも私に完璧に理解している事が、
この世にひとつでもあるのだろうか。
誰しもが、ぽっかりと大きな穴のあいた、
真っ暗闇の宇宙を抱えていて、
時々吸い込まれそうになる。
そう、穴があいているのだ。
他人とくだらない事を言いあって、
じゃれあったり、慰めあったりして、
ただそういう事を、
平気で出来るという事が、
こんなにも愛しくて尊い事だとは
今まで気が付かなかった。
どれだけの、苦しみや、葛藤や、孤独と
対面する時間を通過すれば、
次に行けるんだろう。
そもそも、そんな時間すら必要ないのかもしれなくて、
私が、まるで免罪符のごとく、
自らで引き寄せているだけなのではないかという、
感覚に侵食され、
だったら、なんだ、全ては無駄で徒労で、
結局どこへも行けはしないのではないかと、
神様を呪いたくなる。
そして神様はただうすら笑いを浮かべて、
私を見下ろしている。
どこへも行けないのだったら、
もはや何の意味もないではないか。
というか、そもそもどこに行きたいかさえも、
皆目見当がつかない。
まあ、こんなもんか、という気持ちと、
革命を求める気持ちとの間で揺れ続け、
それでも、日々は確実に過ぎ、
私の寿命もちゃんと減っている。
“回り続けるレコードに運ばれて”
と、七尾旅人が歌っているけれども、
なんとなく、その言葉に救われる。
人生とは上昇するのではなく、
ぐるぐるとただ回り続けているのだと。
それは、地球の自転や、公転と同じなのだ。
そんな事に気が付くにも、
随分時間がかかったものだ。
皆はとおの昔に知っているのだろう。
知らないのは私だけの事が、
他にも随分あるように感じられる。
ただ、目の前に差し出される物事や、
出会いに一喜一憂して、執着して、すぐに忘れて、
でも、本当は忘れたくないこととか、
執着しなくちゃいけない事があるような気がして、
それは一体なんだろうと、
目をこらして見てみるけれど、
これまた皆目見当つかないのだ。
そんな風にしながら、ぐるぐると、今日も回り続ける。
七尾旅人×やけのはら『Rollin' Rollin'』

七尾旅人の声がめちゃくちゃいい事に気が付いた、
記念すべき一曲。