深い深い闇の底

私達は普段、普通に生活しているとき、
物事のごくわずか表層の部分しか
見えていないし、感じる事が出来ない。
でも、本当はもっと深い部分で、
色々となにやら魑魅魍魎なものたちがいつも蠢いていて、
物事の本質的な部分、つまり芯のようなところを
動かしていて私達に影響をおよぼしているのだろう
という感じがした。
音楽や文学というのは、
そういううねうねと蠢いている、
得体のしれない何かを感知して、
表にひっぱり出してゆくことなのかもしれないと
思ったりした。
だから、いい音楽を聴くと、
「ああ、そういうことか」と、
何もかもを理解出来たような爽快感を、
もたらせてくれるのだとおもう。
深い深い闇の底。
そこに隠れているものを
ひっぱりだすには、
それなりの体力と根気と純粋さと性格の良さ
が必要だ。
もしくは、勝手に喋り出すということもある。
時々猛烈に闇の底が恋しくなって、
浮き上がれなくなる。
そうなると、いつも上の空で、
表面的な世界とうまく関わっていくことが出来なくなって、
にっちもさっちも行かないということがある。
突然、人と喋れなくなったという画家がいるけれど、
きっと、何かが邪魔をしていたんだろう。
そういう人は、たぶんものすごく愛されている。
言葉を話させないくらいに、
あっちに呼び込もうとする何かに。
何かを表すには、潜るという才能が必要なのだ。
それは努力でどうにかなるもではなく、
そいういう力を持って産まれてきてしまった、
というだけにすぎないのだろう。
どういう意味があるにしろ、
それは単なる体質の問題なのだ。