もやん

人の話を聴いていて、なにかもやっとするような、
ざらっとするような感触がして、
でも、その人の話しを遮るわけにもいかなくて、
うんうんと、相槌を打って聴く。
時々、話し手を満足させるような、
過剰な反応を無意識の内にしたりして、
なんだか滑稽だなと、頭の片隅に意識しながら、
かといって、その場の空気を自ら崩すような大胆なことはできないし、
早く終わる事を願って、話し手の世界に身を潜める。
家に帰る途中思い出す。
さっきの人が語った世界が、感覚が、
本当に私の感じていた世界で、感覚だったろうか?
いや、違う。
そんな安っぽくて、皮肉っぽい世界を観てたわけじゃない。
それなのに、私はうんうんと相槌を打って、
ああ、本当に何をしているんだろう。
悔しくて、苦しくて、なんだか気が狂いそうなほどで、
ごめんなさいと、謝りたくなる。
違うのだ。
現実はもっと神秘的で、魅惑的で、ドキドキしていて、
物事は常に前進していて、昨日より今日、今日より明日で、
そういう世界に私は住んでいたくて、
諦めが前提にあるような世界には住んでいたくないのだ。
苦しい。
息が出来ない。
そして、何か怒りにも似た、変な気持ちが私の心を支配するのだ。
どうしてくれよう、私のこの世界。
そんな風にして、思いがけない処で人が傷ついていたり、
そして傷つけていたりするんだろう。
どうか、そういう想像力の働くことのできる人でありたい。