ナマケモノ

ナマケモノは1日18時間寝るらしい。
死んだら次に産まれたい生き物を神様に自己申告できる
システムがあるとすれば、ナマケモノを希望しようと思った。
 
車を走らせていると、
遠くのほうで雨が降っている様子が橋の上から見えた。
空から雨が降っているのか、
地面から蒸気が昇っているのか一瞬わからなくなる
この光景が好きだ。
沖縄ではよく見た光景だ。
 
私たちはいつかこの世界から居なくなる。
するっと消える日が必ずやってくる。
そういうことを芯から実感するとき、
誰かを嫌いになったり、恨んだりする暇なんてないと
思うのだけど、悲しいかな、
人は普段そんなことは意識しない。
 
人に会っていないのは、
死んでいるのと同じだと何かの本で読んだことがある。
別々の場所で歳をとり、別々の場所で生活を営み、
時々思い出していた人も、それほど思い出すこともなくなって、
突然の訃報が耳に入る。
「○○さん死んじゃったんだって」
もう会うことはない。
会っておけばよかったなんて惜しんでも、もう会えない。
そもそもそんなに深い思い入れなんてない人だった。
でも深い思い入れのある人なんて、
どれだけいるのだろう。
結局、会わなくなって、会話をしなくなって、
別々の場所で暮らすようになったら、
きっと自然に忘れていくんだと思う。
自然に、色々なことに埋没して、存在が消えてなくなる。
遠いどこかで暮らしていたとしても、
それは、その人にとって死んでしまったのと同じだとおもう。
いかにして人の記憶から綺麗にいなくなれるかというのは、
ひとつの美学だとおもう。
 
そんなことを考えながら車を運転して、
家に帰ってきたら猫が居た。
たくさん撫でた。
とりあえず私と猫がこの世界で会っている限り、
たくさん触ってその存在を刻もうと思った。
いつか忘れてしまうんだとしても。
 
気になる光景その①

気になる光景その②