マアジナル

田口ランディ氏の「マアジナル」を読む。
「アルカナシカ」もすでに読んでいたので、するっと読めました。


一竹辻が花、シュレーディンガーの猫、ハリーポッター、など、
私が今年に入って出会ったものや、日々考えていたことが、
続々と出てきておもしろかった。
「あーこんな風に情報を解釈して部品を繋げていくのかー」と、
その繋ぎ方、思考の癖に、田口ランディ氏の本質を垣間みた気がした。


この人はとにかく売れたいんだな、というのがよく滲み出ている。
情報の海をジェットコースターのように滑って行く。
たぶん村上春樹氏のようになりたいのである。
村上氏の十八番である女子の失踪に始まり、
阪神淡路大震災やオウム真理に触れ、
そこにUFOが突っ込まれている。


題材はおもしろいし、言葉の説得力も文句ない。
しかし、いつも何かが物足りない。
村上春樹氏や、よしもとばなな氏にはあって、
田口ランディ氏に少し足りないもの。
それはバックにある品の良さのようなもの、それと美的感覚。
何かがさつで強引なのである。
しかしそれがランディ氏そのものである。
むしろ、二者にあって、ランディ氏にあるもの、とも言える。
偉大なるものへの憧れ、羨望、そういう気持ちもよく見える。


物語世界の全体的な調和が必要なのだ。
それは文字全体から立ち上る香りであり、聴こえるか聴こえないかぐらいの音色のようなものだ。
創作する。その行為のバックに蠢くチカラ。
それこそが、その人そのものでもあるし、
オリジナリティともいえる。


それでも、中東を歩く聖者の心の叫びのような部分はとても美しく、
田口ランディ氏自身の魂の本質を見たような気がした。
クライマックスの緊迫した出産シーンも女性の作家でないと書けないし、
やっぱ女に文才与えたらエラい事になることを実感した。
美醜もひっくるめてがっつりと貪欲に書き切ってくる。
なでしこJAPANにも通ずるど根性さ。
これからの日本を支えるのは日々、大口開けて「ぎゃはは」と笑う、
全国の女性達だろうと痛感している。

マアジナル

マアジナル