愛の分量

私は人から愛された量を覚えていて、
それを返さなくてはいけないと無意識のうちに心が動く。
以前、他人のものすごい心の景色というか、
好きなものに対するエネルギーの注ぎ方や熱量のようなものを、
見て、触れてしまって、
それを忘れることが出来ずに現在に至る。


きっと彼のそのような神髄に少しでも触れた人は誰も忘れることができないだろう。
人生の色を変え、世界をかえる。


私はそれを呪いと呼び、魔法と呼び、愛と呼ぶ。
なぜなら何年たっても忘れることができずにいる。
色々なことをすぐ忘れる私でも、
いつまでもその記録であり記憶を塗り替えることが出来ない。


どうして自分の人生にそんなことが起きてしまったんだろうかと思う。
それは私が求めていたものなのだろうか。
それでおびき寄せてしまったのだろうか。
だとしたら、私の人生とはなんと深く苦しいものだろうか。


少し死を近くかんじる。
しかし死はおそろしくはない。
ただはやく死んで世界と解け合いたいとおもう。
そうすればこの苦しみからも逃れられるのだろう。


死もきっと自分からおびき寄せるものなのだろう。
しかし、私は死のギリギリの淵までいくけれど、
それ以上は行かない。
ほんとうに「あちら」に行くには早すぎるから。
もう少し本当を知りたいし、
私が見たい世界を見たい。


記憶を塗り替えることもできず、
忘れ去ることもできず、
私はいつまでもジタバタともがくのだろう。
途方に暮れるような事実だけど、
日々その重さを誤摩化し、しかししっかりと抱えて、
人生の終わりまで歩いて行くしかないのである。


どうかその苦しみに耐えかねて、
想いが憎しみに変わることだけはありませんように。