うつりゆくもの

「イケムラレイコ うつりゆくもの」を、
三重県立美術館に観に行ってきました。
三重県津市出身のイケムラさん。
現在、海外で暮らしておいでです。


イケムラさんは女の子を沢山描いています。
子供でも胎児のような不確かさも孕んでおります。
胎児の女の子です。
少なからず私はこれからイケムラレイコさんの世界を意識して生きていくんだと予感しています。
「可視化」
全ての表現はそういった側面があります。
ぼんやりと感じる世界を、丁寧に切り取り、表す。
人はそのような作品に出会うと、立ち止まり、ぼんやりと眺めて、
自分自身を確認するのだと思います。
魂の交流です。
人の心の底には深い深い海があり、
そこに降りていくと全ての人たちが繋がっていて、
沢山の人たちが行き来しているんだと思います。
「降りていくこと」
降りていくことの出来る人たちが、
降りていき、そこの風景を切り取ってきて、表す。
ただそれだけなのかもしれません。
イケムラさんの作品は魂のふるさとのようでした。
イケムラさんは三重県で産まれ、
1972年スペインに渡り、スイスを経て、現在はドイツ拠点に活動されているということです。
今回初の回顧展で東京国立近代美術館三重県立美術館で作品を展示しました。
三重、日本、というふるさとを旅立ち、
世界で人間の魂の底を見つめ続けるイケムラさんに、
私は少なからず影響を受けたのでした。
どこに居ても、すべてと繋がっている。
そのような自由さを感じ取り、ひさしぶりに深い呼吸が出来たかのようでした。


広島、長崎、福島。
日本は3つの穴を抱えています。
そこはどうしようもない人間の罪を抱えてしまった土地です。
見た目には徐々にきれいに整備されたとしても、
未来永劫、その穴は塞がれることはないでしょう。
人間がつけた見えない傷あとのようなものです。
その穴から、たくさんの「ナニカ」がやってきます。
その「ナニカ」は私たちに悪い夢をみさせます。
こっそりと忍び寄り、人に悪さを働かせるのです。
私たちは無意識的に罪をおかす、という現象に苦しめられることでしょう。
意志の弱い人たちから徐々に、冒されていきます。
しかし、穴を塞ぐすべはありません。
私たちが注意深く生きていくことでしか防げません。
注意深く真面目に生きている人でさえ、
何かのツマヅキによって一気に豹変する、
そんな可能性だってあるわけです。
夢中になって暮らすために、
音楽が絵が言葉が必要となっています。
人々が悪さをしないように、魔法をかけるのです。
元居た場所を思い出してもらえるように、
さりげなく、押し付けがましくなく、そこに掲げなくてはいけません。
表現者はそのような責務を負っているのです。
解っている人は、その解っていることを、
きちんと発表しなくてはなりません。
そのことをより深く認識すべき時代に居ると言えるでしょう。