ジャスコと秘宝館とヤンキーと

大竹伸朗さんの「全景」をじっくりと眺め終える。
ビリビリする。そして何かを産み出したくてモゾモゾしている。
この感じは久しぶりだ。
あれだけの膨大な量である。
私の未熟な感覚が全てを受け止めきれるわけもなく、
取りこぼした部分が大いにあるが、
大事な何かが私の上を通過して行った感覚だけが確かに残っている。


色々なことが繋がっていった。
私がなぜ数年前に大竹伸朗さんの「全景」を購入したか。
そしてずっと本棚の一番下に常に鎮座させていた、
漬け物石のごとく重たい本を、なぜか今再び開いて、
改めて何かを受け取ったのか。
色々なエネルギーがグルグルと体中を駆け巡る。


いしいしんじさん、細野晴臣さん、浅川マキさん、都築響一さん。
私のアンテナに引っ掛かる数々の人々が繋がって、
そこにある宇宙の引力に引き寄せられ、
私という人間の存在があぶり出されるといった次第。


私が大竹伸朗さんに引き寄せられる理由。
それは膨大なエネルギーを轟々とたぎらせ、
愛に溢れた眼差しで世界を拾い集め、
命の謎、そして確信に、確実に迫っている。
そういう秘密にぐーんと近づいている音が聴こえる。


愛情と嫌悪。
常に両極端が絡み合ってそこにある。


極めて宇宙に忠実なその世界に、
私はどぎまぎする。
私の原風景が喚起する。
そして何でもないその風景こそが、
芸術なのだと気がつく。


これまで観てきた風景の中で一番おもしろいものが、
実は一番近くに当たり前のように存在していたのだ。
そのことに気がつくこと、世界はとたんに動き出す。
陽気に歌いだし踊りだす。


うねる魚。
たぎる血。


そこから次々と産み出されていく世界のカケラ。
世界の秘密に少しだけ近づけた気がした。