みたされる

不思議なことに満たされている。


私は満たされなくて困っていた。
「あれも欲しいこれも欲しい」
ジタバタとせわしなくずっと何かを求めていた。
何が欲しいのかもわからない。
ただ足りていない気がして、
手を伸ばして、必死になにかを追いかけていた。
でも、本当はすでに全てを手にしていた。
そのことに、なんとなく、気が付いた。


でも、これもただの錯覚かもしれないな、
と、思ってみたりもする。
人の意識というものは不思議なもので、
変化しない、ということをしない。
常に変化し続けている。


友人は細胞は7年で全て入れ替わると言っていた。
7年経っても続けているものは、その人にとって本当だという。
私は7年同じ人のことを思い続けていることに気が付いた。
会えば会うほど気持ちは澄んでいくようでもある。
7年の間に逃げたし、憎みもしたし、恨んだりもしたし、
もう駄目だと思ったこともあった。
それでも、私は今7年前と同じように、同じ人のことを思っている。
未来のことはわからない。
誰だってそうだ。
いつどんなものに出会って、
新しい世界が始まるかもしれない。
そんな世界で私は7年思い続けることは、
すごいことだと思ったりもする。


人間の心の有り様も少しはわかってきた。
私は満たされることを恐れない。
ふんわりとした暖かさに包まれることを恐れない。
そこにある確かな幸せの風景を、
噛み締めることが出来るうちに、
しっかりと噛み締めておくことが、
今後のためにもとても重要なことのような気がするので、
私はしっかりと幸せの風景を反芻して、
死んでも地球上のどこかに残るように、
しっかりと刻む作業をする。
朝おきるとき、と、夜ねるとき。
それから目が覚めている時の白昼夢に。