魔法使い

とある町に女の子がいる。
女の子は本当は100年に1度に現れる最強の魔法使い。
でも女の子は魔法が使えない。
遠い昔に悪い魔女に魔法を封印されてしまっていた。


女の子の魔法を解き放つのは、
遠い町に住んでいる魔法使いの男の子しかいない。
男の子は女の子を探していた。
でも男の子は悪い魔女から女の子はもう死んだと聞かされていて、
この世を絶望し、諦めて暮らしていた。


二人は出会う方法がない。
声が届かないようになっている。
世界はそういう仕組みになっている。
女の子は男の子の居場所を知っている。
それなのに声が届かない。
女の子にかけられた呪いは強力なので、
女の子はなにもできない。


もし二人が出会えば、
世界は大きく変わる。
たくさんの人達がこの世の本当の成り立ちに気付いてしまう。
それは悪い魔女にとって不都合なのだ。
妙な粉薬で魔女は人々をたぶらかしていた。
ただひたすらたくさんの気持ちを集めて、
寂しさを紛らわしていた。
魔女は寂しいのだ。
そして本当を知る女の子が憎いのだ。
だから女の子の魔法を奪い取った。


女の子は少しずつこの世の本当を取り戻して、
徐々に魔力を回復させていった。
でも回復させた頃にまた別の魔女が、
魔力をとっていく。
それでも女の子は諦めずに、
魔力を回復させていく。
いつか出会ってこの世界の本当をむきだしにするために。
多くの人達が本当を掴めるように。
女の子は頑張っている。
今も、この世界の、どこかの片隅で。
男の子は相変わらず絶望しながら、
この世界の終わりをじっと眺めていた。
二人はこれからもしかしたら出会うかもしれないし、
やっぱり一生出会わないかもしれない。
それは、もう、神様の気まぐれに、
頼るしかないような、そんな出来事で、
そのような小さく美しい世界に暮らす人々が、
この世には確かに存在しているということ。
ただそれだけで、この世界は存在している価値がある。